機動戦艦ナデシコ

princess of darkness



ACT−#06 「罪温かく、和らげて」













何時果てるか、はたまた、永遠に続くとさえ思える宇宙空間を疾走するナデシコ

その船体は数度のズレもなく火星へと向けられていた。

惑星、衛星のラグランジュポイントを通過した後、

微弱な重力に引き寄せられることもなく、只管突き進んでいた。

もちろん、操舵師が四六時中付いているわけでもなく、オモイカネによるオート操作である。

進路の違いを正すために、定期的に噴かされるエンジン。

しかし、そのときに生じる微動も、戦闘よりは軽いものだった。

そんな平和なナデシコが成り立っている理由は一つ。

敵からの襲撃、または戦闘行為がないのだ。

木星トカゲのチューリップも宇宙空間に放置するほど数が無い様で、攻撃といっても威嚇程度の遠距離砲によるもの。

出力全開のディストーションフィールドがそんなもので破れるはずもなく、ただ遠距離砲の無意味な行動を繰り返していた。

だが、平和だといっても、それはパイロットやその他クルー、もしくはブリッジクルーだけで。

この艦を止めることも、動かすことも司っているAI・オモイカネは常時CPU使用率のままだった。

人間で言うところの仕事中であり、暇はない。

まぁ、AIが休息や暇を要求するのも不気味だが。








そんなこんなで深夜2時00分。





非常灯のみのブリッジ

薄い碧色の光は十分とはいえないが照明にもなっていた。

そして、オペレーターシートにいる白銀髪の少女。



「オモイカネ、お疲れ様。」



彼女、ルリがそういいながらコンソールパネルに置いた手を離す。

かなり長時間座っていたようで、立つときに少々ふら付いた。



≪ルリもお疲れ様〜♪≫



眼前に飛び出る水色が背景で桃色が文字のウィンドウ。

彼女としては珍しくもないが、二日間の徹夜を終え、寝床に戻ろうとしているところだった。

幸か不幸か、マシンチャイルドにはナノマシンのみならず様々な面でコントロールすることも出来る。

脳に至るナノマシンが器官の機能を興奮させる物質の量を調節することさえ任意に出来るのだが、彼女とてまだ11。

体力が追いついていけるはずもなく、明らかに彼女の体と脳は休息を必要としていた。

本来、人間の睡眠という概念は覚醒時に酷使した脳を休ませることにある。

人間の身体を動作を司る代物だけあっても、やはり休息は必要なのだ。



「じゃあ、おやすみ。」



飛び跳ねるウィンドウに苦笑を浮かべながらも、ルリはブリッジを後にした。









やはり暗い艦内。

先程から続く話で申し訳ないが、人には生活のリズムがある。

起床、就寝など、様々だが、そのリズム…旋律は狂わせると必ずどこかで副作用が来るのだ。

そのため、ナデシコでは地球平均時間と言うものを算出している。

簡単に言ってしまえば地球の時間だ。

日没、日出という概念がない宇宙ではそれが非常に重要になってくる。

仕事の効率を上げるためにも睡眠は必要なのだ。



「ふわぁぁ・・・」



普段では決して見せないようなあどけない仕草でも、つい出てしまうのが一人の時

口元を覆った手からは、とても眠そうな欠伸が漏れる。

ルリはエレベーターに乗り、自分の部屋がある居住区を選択した。

扉が閉まり、軽く体が浮いたような感覚に気が遠くなりそうになるも、手すりにつかまり、それに耐える。






チーン





軽快な音と共に軽い振動が起き、自分の居住区のランプが光る。

開いた扉から出て、ルリは自室へと足を運んだ。










ルリ、セレス自室にて

今しがたシミュレータールームから戻ってきたセレスはナデシコの制服を脱いだ。

もちろん、パイロットの赤。

前のボタンを外した時に現れる二つの丘

セレスはブラジャーを着けない。

ついでに言うと、女物の下着もつけない。

何故か男だったときの性格が反映してか、背徳感があるようだ。

セレスは、黒いタンクトップの上から自分の双乳を両手で覆い、首をかしげる。


「この間より…大きくなった気が…」


しげしげと自分の胸を見るセレス

しかし、少し経って赤面したというのは言うまでもない。

自分の胸とはいえ、赤面する辺り情けない(爆)


「汗かいたから、シャワーでも浴びよう…」


一人しかいない部屋に呟き、自室についているバスルームに向かう。


プシュ


だが、バスルームのドアノブに手をつけた瞬間、入り口のドアが開いた。

廊下にいるのは、そう、ルリだ。


「あ、セレスさん。」


起きているとは思わなかったのか、目を丸くしてセレスを…否、セレスの胸を見る。

身長差から言って当たり前のことだが。


「あ、お帰り、ルリ。」


その言葉に、ルリは心地よさを感じつつも、閉じたドアにロックをかけた。

就寝する下準備だ。


「寝るのか?」


セレスがタンクトップを脱ぎながらルリに向かって言う。

セレスとて、ルリが二日間の徹夜明けだということは承知していた。

しかし、ルリは子ども扱いされるのを好んでいないため、セレスは何時も大人と同じように接している。

そして、子供は疲れたら寝てしまうのがセオリーだ。


「あ、シャワー浴びて寝ます…」


いつもより元気のないルリをみて、正直不安になったのか、セレスはもう一度タンクトップを着た。


「なら、先に入りな、私は後で良いから。」


そういいながらナデシコの制服に手を伸ばした。


「どうせなら、一緒に入りませんか?」













「…………(汗)」







(るっ…ルリってこんなに積極的だったか?)








セレスは固まってしまった。

これで女性と裸の付き合いをするのは二度目である。

しかし、彼女はまだ慣れていなかった。

幾ら11歳と言えども、女性は女性。

そして、胸も出てくる二次性徴の最中であった。














「いい!!私は後で!!(汗)」


「いっしょは駄目ですか?」


「ほら、疲れてるだろう?いや疲れてるはずだ。なら早く入って寝たほうが良い!(滝汗)」


「セレスさんだって、汗ぐっしょりです。」


「ルリだって目が開ききってないぞ。(激汗)」


「いつものことです。」


冷静に返答してくるルリに疲れ気味なセレス。

だが、ルリとしては珍しい一方的な取り決めで、二人はいっしょに入ることになりそうだ。

セレスとしては一人ずつでよかったのだが、ルリがあまりにも一生懸命に誘う上、

しかも、一対一。

助け(逃れ)を呼ぼうにも無理だ。


そう状況判断をしたセレスは無謀にも反論をし続ける。


「そっ…そんな目で私を見ないでくれ…」


冷めているような、それでいて期待のこもった視線が、セレスに痛い程投げかけられていた。








「解ったよ…入れば良いんだな。入れば…」







半分諦めが入ったセレスの呟き、ルリはまだ子供だと思って侮っていたのだろう。

それが、後の珍惨事を生む事になるとは…

この時点では誰も知らない。









ルリはあまり大浴場へは行かない。

恥ずかしいわけではないが、皆と生活のシフトが合わないのだ。

広い大浴場に一人というのも寂しいため、彼女は自室のシャワーをよく使っていた。


「それでは…」


いつも通りに服を脱ぎだすルリ。

ネクタイ、オレンジ色のベスト、続いてスカート、Yシャツ、下着…

セレスはそんな「男なら誰でも反応しそうな」条件に耐え、自分も服を脱ぎ始めた

スカートを脱いで、ストッキングを脱ぐ、が、

正直、セレスはスカートとストッキングは苦手だ。

脱ぎにくい、履きにくい、動きにくいの三拍子が揃っている。

最早3Kどころではない。

男のときはズボンと下着のみだったため、今は服だけでなく、気分も重くなるような気がしていた。


「……(どうも好きになれないな…)」


別にセレスは胸をはだけたり、晒す事に羞恥心はない。

もともと男だったせいなのか、本能的に股間は隠すが…(爆)

しかし、胸には長い頭髪がかかっているので現状では見ることが出来ない。



小さな更衣室で女性が二人、いそいそと着衣を脱いで裸体になった。

無論、青少年保護のため(以下規制に掛かりました)と(以下規制に掛かりました)は絶妙なバランスで隠されているが。







「先に入っててください、髪を解かなきゃいけないんで。」


ルリの言葉にはっとし、出来るだけルリの方を見ないようにして気のない返事を返すセレス。

そんなことをしても無駄なのに(爆)

そして、セレスはバスルームに入った。
















「ふぅ…」


軽い溜息をつき、バスタブに座り、シャワーの蛇口に手をかける。


「…(そういえば、ラピスとも入ってたな)」


ふと蘇る、今でも褪せない記憶。

ラピスは、水と暴力と血にトラウマが合った。

それは、カプセルの中でずっと生きてきたからではなかった。

そして、アキトと行動するときになっても、シャワーを浴びるときは、何時もラピスと一緒。

アキトと一緒にいれば、幾分かはマシだった。

一人では発狂したと思えるほど叫び、慟哭を露にし、気を失う。

アキトがいるときは、アキトの腕にしがみ付いたままで、身体を洗うときでも決して離そうとしなかった。

シャワーをかけてやれば、短い悲鳴と共に、アキトの腕に爪を食い込ませるほどしがみ付く。

幸い痛覚が消えていたことが幸いし、アキトは血が流れても顔色一つ変えることはなかった。



セレスはラピスに掴まれていた左腕をさすり、まるで今更になって痛みが蘇ってくるような気がしていた。





キュッ





蛇口を音が、セレス一人のバスルームに響き渡り、勢い良く流れる水が、彼女の身体を濡らして行った。














あんな子供を、あんな恐怖を、もう二度と作り出さないためにも。

『俺』は帰ってきた。

『私』として。

だから、『私』はこの命尽きようとも…











次の瞬間、ドアが開いた。












「セレスさん、シャンプー切れてませんか?」


「ぶっ!」














暖かい水蒸気が、飛び散る飛沫が、バスルームを湿らせていく。

中では水の滴る音と、換気扇が回る音が支配していた。

時折、大きな雫がタイルを打つが、さしてそれを気にも留めず、二人は体温を高めていった。

肌をあわせたまま、二人の頬にはほんのりと赤みがさしている。







「せっ……セレスさぁん…あっ…あつぃ…です…」


「…んっ…ふぅ………でも…気持ち良いだろ?」


「けど…こんなのぉ…んぁっ!!」


「…駄目?」


「あぁ!嫌ぁ動か…ないでぇ…く……はぁぁ…!!」


「んふふ……ほれ!」


「うぁぁ!!」


「…もっと深く体を沈めろ、その方が…気持ち良いからっ…!」


「もう・・・駄目です、出ます、出ますぅ…!」


「まだだ、まだ我慢…だ………ぅ…!」


「駄目なんですぅ…もぅ…ダメェェェェェェェ!!!」


「なっ、何を!?」


「はぁああぁぁぁぁぁ…」







へたっ、と力なく縁につかまってしまうルリ。

随分消耗したらしく、額には玉のような汗がにじみ、肩で荒い息をしている。

一方のセレスはまだまだ余裕の表情でルリの背中に胸を押し付けていた。

二人の距離は、ルリの背中とセレスの胸の距離は、ゼロに等しい。



そんな中、セレスは湿ったルリの髪をすくい、肩にかけた。


「全く、こんな程度でネを上げては…」


「だ…だって、セレスさんが…」


「言い訳は無しだぞ。」


「そんなぁ…」


真っ赤に染めた顔と甘ったるい声でルリが呟き、セレスは鼻で「ふふん」と笑ってみせる。





誤解している人のために説明するが。

二人がバスタブに43度の湯を張り、その中で浸かっていたところ。

ルリが「熱いので」といいながら入るのを拒もうとしたところ、セレスに引きずりいれられ。

熱い湯の中、セレスが動いたところ、ルリが熱がり、腰を浮かしたので、セレスが深く入るように言った。

だが、ルリは堪らなくなって出ようとしたが、再びセレスに抑えられてしまう。

そして、ルリは強行手段として、水道の蛇口を捻ったのだ。




不満そうな顔つきのセレスを尻目に、辛そうな顔を徐々に緩めていくルリ。

水温は現在38度。

温い水温となっていた。




「ふうぅ〜」


セレスの方に倒れこむルリ。


「……ぅ」


意外と軽く、細身なルリの身体に少々驚き、セレスはルリを見下す。

丁度、ルリが胸の谷間に挟まれるような感じだ。

もちろん、セレスは自分の胸に邪魔されてルリの身体を見ることは叶わない。


「大丈夫か?」


悪ふざけが過ぎたと思ったのか、セレスは心配そうにルリの顔を覗き込む。

ルリの呼吸は大分整っていた。


「…大丈夫・・・です。」


いきなり、ルリがバスタブの隙間からセレスの背中に手を回す。


「…どうした?」


その手は徐々に間隔を狭めて行き、終いにはルリがセレスを抱きしめる形となっていた。

そして、ルリは顔をセレスに押し付けていった。

セレスの股を割って侵入してくるルリの細足。


「…ぅ…」


流石にその状態で身動きをとることもかなわず、言葉を発せない沈黙が続いた後。

ルリは顔を上げた。

そして、その瞳は潤んでいた。


「……ごめんなさい。」


「…ぇ?」


素っ頓狂な声を上げ、ルリを見るセレス。

動揺を含んだそのセレスの声を聞き、ルリもまた手をキツくした。


「私、兄弟とか、両親とか、身内が解らないから…」


恥ずかしそうに視線を逸らすルリに得体の知れない愛しさを覚え、少しずつ鼓動が早まるのが解る。


「そか…」


セレスはそれだけ呟くと、自分の手をルリの首に絡ませ、引き寄せた。


「だったら私を、私達を家族と思えばいい。」


「家族・・・ですか?」


小首をかしげるルリに、軽くうなずいて見せるセレス。

同情…ではない。

セレスはルリにラピスの面影を重ねていた。


「私にも、家族はないから…」


ルリの細い足に、セレスのしなやかな足が絡みつく。


「・・・セレスさん・・・。」


感極まって、ルリはセレスに身を預けていた。

セレスは、その小さな身体を壊さぬように、壊してしまわぬように包みこみ、

さめざめと涙を流す一人の少女をただ只管に、愛しく想っていた。

ルリは、セレスの抱擁に至上の心地よさを感じていた。

セレスは、彼女と身の上も似ている上、こんなにも自分のことを想ってくれていた。

それが嬉しかった。

試験管から生まれてから今まで、自分を人として、一人の少女として扱ってくれたのはナデシコクルー。

だが、セレスだけ、彼女一人だけ、自分を拒むことなく受け入れてくれた。

家族と、言ってくれた。

それが嬉しかった。

セレス自身も、その苦痛、悲愴、孤独が身にしみて解っている。

そんなセレスは、ルリが自分に見えてしまうのだった。

何も感じられない、何も出来ない、動けない。

そんな醜態の苦痛、悲愴、孤独さえ、セレスは知っている。

だから、セレスも嬉しかった。

悲しみを打ち明けてくれたから。

痛みを教えてくれたから。

寂しさを示唆してくれたから。














無意識のうちに







セレスの頬には







一筋の








雫が








伝っていた。


















バスルームから上がった二人の体温は程よく温まっていた。

部屋にあるベッドもキチンと整えられていて既に就寝可能だ。

薄暗い証明が照らす中、セレスは先程と違う白いTシャツとスパッツを着て自分のベッドに倒れこむようにして寝転んだ。

そして、先程の出来事を振り返っていた。

自分には女体に免疫がないはずである。

少なくとも男であったときはそうだった。

だが、慣れ…とでも言うのか。

ルリの裸体を見たときは正直恥ずかしかった。

しかし、同じバスタブに入った時、それは消えうせていた。

何故だかは自分でも解らない。

ルリとラピスが重なってしまったのは事実。

自分が一緒に入ったのも事実。

それなのに、セレスは照れるどころか距離を縮めてまで同じ湯船に浸かった。

それが疑問でならない。

隣のルリを見ると、布団の中で既に静やかな寝息を立てていた。

その安らかな表情を見て、セレスは一切の考えを止めた。




――――
馬鹿馬鹿しくなった。


それが本音であった。

こんなにも安心して、こんなにも安らかに眠っている子供にまで疑問を持つことが。

そして、セレスの脳裏にも『もう、寝よう』という発想が生まれ、彼女は布団の中に身体を埋めた。







翌朝まで熟睡できると信じて。









そして、その儚い願いは完膚なきまでに破壊されることになった。


ぴっぴっぴ♪


不意に、時間を知らせるアラームが鳴り響く。

音のボリュームはそんなに高くなかったが、セレスは起きてしまった。

別に熟睡していたわけでもない、かといって、眠っていないわけでもない。

そんな睡眠だった。

音を立ててルリを起こすことにも気が引けたのか、セレスは目を開けたままで動かなかった。

少々肌寒い空調を凌ぐためか、無意識のうちに身体を丸めてしまう。

丁度、体育すわり、といったところか。

ぼんやりとした視界に入ってくるのは、正面で向こうを向いているルリの背中。

身体を見ると、案の定、自分と同じく丸まっていた。



――――空調がききすぎたのだろうか。

セレスは放っておくことも出来ず、静かに立ち上がり、ルリの近くに歩み寄った。

そのまま、彼女はルリの布団をかけ戻し、ルリの顔を覗き込む。


「・・・・・・・・・・・・」


いつもは無表情、鉄面皮と散々なことを言われているが、寝顔は本当に可愛らしかった。

年相応の仕草も、今では貴重なものだと思えてしまうから不思議だ。


「・・・・・・・ぅ・・・ん・・・」


そして、寝返りを打ったときに聞こえる声も、初々しい。

やがて、気付く。










ルリは、前の世界では、何時も一人だったと。










勤務や食事で人と一緒になったとしても、それは数時間に満たない。

過度の勤務や残業のせいで独りきりになることもしばしば。

ミナトやメグミ、ユリカ、リョーコ、ヒカル、ウリバタケ、・・・etc…

彼らが接してくれることはあっても、所詮一人になる。

部屋に帰れば一人。

仕事が遅くなれば独り。

風呂に入っても一人。

シフトがズレ独り。



・・・孤独だったはずだ。

自分にはユリカという存在がいた。

鬱陶しいと思っても、いたのだ。

自分にはクルーたちがいた。

何時も。

しかし、ルリはどうだ?

まだ、遊びたい盛りの10代前半で、同年代の友達もなく。

来る日も仕事、戦闘ばかり。

そして、セレス自身「Prince Of Darkness」となったときでさえ。

頑なに、自分はルリを拒絶した。

自分を見下しているように見えた。

そういってしまえば唯の言い訳としかならない。

だが、現実は違う。

戦艦を動かしてまで自分を戻そうと必死だった。





俺は…自分勝手な奴だ。





そう、自虐的に心の中で呟くセレス。

ここで一つ、彼女は変わった。










「起きてください。セレスさん」


戦艦内だから、心地よい朝日の光なんて拝めるはずも無い。

しかし、それとはまた違った別の心地よい何かに目を覚まされた。


「…ルリ…ちゃん?」


あれから、すぐに寝入って深い眠りに就いたのだろう

ルリが起してくれる事が当たり前だった“あの時”と勘違いして

いつもルリを呼んでいた呼び方で呼んでしまった。

それに気がつき、一気に頭が覚醒する


「あっ・・・ルリ。おはよう」


別にルリは気にした様子も無く、その幼い体にはいつもの制服を身に纏っていた。

「おはようございます。セレスさん、では私はもうブリッジに行かないと行けませんので」

ベットの上にいるセレスに一礼をすると、部屋のドアの方へと歩いていく。


「あっ…」


その時、ルリが何か思い出したかのようにセレスの方へと向きなおった。


「どうした?早く行った方が良いんじゃないか?」


なにか忘れ物か、今日は遅くなるとでも言うのかと思っていた。

でも、そんな事ではなかった。


「あの…寝る時は自分のベッドで寝てください。でも…ちょっと嬉しかったです(赤面」


「あっ…(赤面」


また、一礼だけすると部屋をいそいそと出て行くルリ。

ベッドの上では、ルリが何故御礼を言ったのか・・その答えが分かっているセレスが、顔を真っ赤にして呆けていた。






セレスが寝ていたのは自分のベッドでは無く、ルリのベッド

昨晩、あの後、セレスはルリのベッドに入り、丸まっていたルリを暖めるように抱きしめて、そのまま眠りに就いてしまった。


「ちょっと…不味かったかな?でも…」


セレスは、先ほどルリが言った言葉を思い出した。


“ちょっと嬉しかったです”


その言葉を聞いただけで、自分がした行動が、ルリの為になったと思って…


セレス自身も嬉しかった。


そして、大きく息を吸い込み、小さく呟いた。



「ありがとう…。私こそ、そう言ってくれて嬉しかった。」









それから、セレスとルリはほとんど一緒にいた。

部屋の中ではもちろん、風呂に入ったり一緒に寝たり…

それだけでは無く、部屋以外の所でもよく一緒にいる所を目撃される。

外から見れば、とても楽しそうに日常を過ごす2人。

ルリも嫌がった様子もなく、むしろ前よりも笑うようになった。


セレスも普通に接しているつもり…だが、

やはり心の何処かに残っていたのだろう。

未来のルリにしてしまった事への「罪滅ぼし」という事が。

そんな思いは、沈めておいた方がいいのかもしれない。

少し、複雑な思いなのかもしれない。

でも、それでもいいと思った…と思う。









「くそ…」


そう悪態をついて、セレスは走っていた。

ずっとルリと一緒だった。

セレス自身も楽しく、ルリも笑ってくれていた。

だからすっかりと忘れていた。

下らない叛乱の事を…

命に関わる…という程の大きな事件ではないし、こちらは放って置いて大丈夫なのだが、

問題は、本格的に木星蜥蜴の攻撃が始まるのだ。

フィールドを最大出力にするぐらい伝えなければいけない。







軽く息を切らしながら、セレスはブリッジへ駆け込んだ。

案の定、ウリバタケやリョーコを筆頭とした整備班やその他のクルーが銃を持ち、ブリッジクルーに突きつけていた。

撃つことは無い、そう解っていても、一撃で重傷を負わせられる攻撃力をいざ目の前にすると、

大半の者は萎縮して、恐怖に怯えてしまう。

昔のセレスとて例外ではなかった。

だからこそ許せない、許すわけにはいかない。

与える恐怖と人の命を軽く考えるような愚か者は…


「何をしている。」


ブリッジに入るやいなや、セレスは声の調子を低くして、その透き通る声を響かせた。

ウリバタケとプロスが言い合いをしていた最中でも、それはその場に居た全員を震え上がらせるのには十分すぎるダークトーンだった。

背筋が凍りつくような戦慄。

その声の調子は幾らか違っていても、『Prince Of Darkness』そのものだった。


大切な者を傷つけようものなら、存在全てを抹消する。


そんな気配さえ漂わせたセレスは。


気圧される様にして一同は黙り込み、ただ唐突に現れたセレスに呆然と視線を向ける。

それからセレスは疾風の如き速さでルリを抱きかかえると、オペレーションの所へ付かせた。


「ルリ、今すぐフィールド出力全開。敵が来るぞ。」


見透かしたように淡々と述べ、目を細める。


「はっ、はい!!」


ルリは滅多に声を荒げることのないセレスに多少慌てて、セレスに言われた通り、フィールドの出力を上げた。

そして、次の瞬間、目の前が光に包まれた。


「戦闘領域に入ったようだな。言い合いする暇ないと思うぞ?」


隙の無い冷徹な声を放ち、鋭い眼光を一同に向けた後、

セレスは、いきなりの攻撃に目を白黒させているブリッジの面々を残し、格納庫へと向かった。







「ユリカが説得したみたいだから、ブリッジは大丈夫そうだな…」


格納庫に現れたパイロットの面々を見ながらそう呟くセレス。

ユリカの能力はセレスが一番よく知っている。

その中でも人心把握と作戦能力はずば抜けている。

彼女なりにユリカを信頼して、敢えてブリッジにいたクルー達に冷たく接したのだ。

そうして静まり返り、話を聞いてくれるような雰囲気を作らなければいけなかった。




ふと思い出したように、セレスはコミュニケを繋げた。

先に居るのは、ルリだ。

一瞬驚いたように眼を大きく開けるルリ。

その顔に一瞬複雑そうな表情を見せたセレスは、何故か済まないことをした気に駆られた。


「ルリ、さっきは手荒にして済まなかった。」


『いえ、私は大丈夫です。それに…ありがとうございました。』


コミュニケの向こうで、赤面しているルリを見て、何故か心が和んで行く。

そして、思い出したように顔を引き締め、隣に敵の分布を示したウィンドウが現れた。


『気をつけてください。敵は本格的に攻撃してきています。』


「分かってる。それじゃぁ…」


回線を切ろうとしたセレス。

そんな彼女に、ルリは少し悲しく、切なげな表情を覗かせた。


『必ず…帰ってきて下さいね。』


「あぁ…それと…また風呂に入ろう。」


苦笑交じりにその言葉を呟くと、セレスはIFSコネクタに手を置いた。


『はい』


凄く温かみのある笑顔を返すルリ、それに答えるかのようにまた微笑み返すセレス。

セレスにはその笑顔が、自分を癒してくれている様に思えた。

「Prince Of Darkness」だった頃の自分を…






「セレス・タイト、ゼロ出るぞ!!」


赤く染まる惑星に浮かんでいる軍隊に向って飛んで行く黒き閃光。


(生きて帰るんだ・・絶対に・・・)


強く心に思いを秘めて、飛び出して行く。

約束を、そして全てを守る為に。









負けられない、大切な人達を護る為に。






















あとがき座談会

しょうへい の発言 :
POD6話あとがき座談会〜(パチパチパチ

八頭 の発言 :
わ〜♪(どんどんパフパフ

しょうへい の発言 :
さて、今回の6話、半分半分ですね

八頭 の発言 :
はい。っといっても私の部分少ないですけどね(汗

しょうへい の発言 :
まぁ、まぁ、でもまとめの部分は丁度良くまとまってると思う。

八頭 の発言 :
どもです。でも、初めて6話を渡された時はビックリしましたよ〜

しょうへい の発言 :
うぇ?

八頭 の発言 :
だって、あんなお風呂のシーンがあるなんて・・・(////)

しょうへい の発言 :
じー

しょうへい の発言 :
しょうがないじゃないかっ!

しょうへい の発言 :
これもある試みの一つなんだから!

八頭 の発言 :
面白かったからいいですよ♪私も少し付け加えましたし♪

しょうへい の発言 :
後は、メイド服と、チャイナ服と・・・(指折り

八頭 の発言 :
ふっふっふっ・・・良い線いってますなぁ(ニヤリ

しょうへい の発言 :
でも今時セーラー服はダメだよねぇ

八頭 の発言 :
ん〜どうだろ?時と場合と中身によるかもね

しょうへい の発言 :
今はやっぱりブレザー(爆死

八頭 の発言 :
うわぁ・・・人の趣味って事で・・(苦笑

しょうへい の発言 :
うおー

八頭 の発言 :
あんまり暴走したらダメですよ?

しょうへい の発言 :
してないって

八頭 の発言 :
なら大丈夫ですね

しょうへい の発言 :
うん

八頭 の発言 :
そういえば・・・この6話で結構ルリと良い感じですよね〜セレス

しょうへい の発言 :
ふふふ・・・これが8話の伏線さ・・・

八頭 の発言 :
っと言う事は・・ルリ×セレスの形を保つのですか?

しょうへい の発言 :
入れたい台詞一丁・・・

しょうへい の発言 :
「セレスさんに何かあったら私、絶対に許しませんから!」(ルリ

しょうへい の発言 :
ってのを入れたい(死

八頭 の発言 :
・・・・ぉぃ

しょうへい の発言 :
えー

しょうへい の発言 :
なんでー

しょうへい の発言 :
それをアキトに言うんだよぉ〜?

八頭 の発言 :
アキトにでもねぇ・・・セリフだけだからそんな感じに聞こえるかも

しょうへい の発言 :
というか、何故ダメ?

八頭 の発言 :
いや・・・あっそうか。あれだもんね大切な人だもんね。それならよし

しょうへい の発言 :
っで、何かが起きるというわけですな

八頭 の発言 :
なるなる。楽しみだね

しょうへい の発言 :
じゃ、お開きにしようか

八頭 の発言 :
はい。それではこれからもよろしくお願いします

八頭 の発言 :
最後に、皆さんPODの応援よろしくお願いしますね〜♪

しょうへい の発言 :
はい、では6話あとがき終〜了〜(パチパチパチ

八頭 の発言 :
はい、ありがとうございました(ぺこり








総作者、しょうへいの言い訳

何?
エロイ?

何を言っとるんだねキミは?

これくらいなら青少年が見てもOKオーケーでしょう。
…多分。
一応座談会の方でも言ったとおり、ルリとアキトとセレス。
この物語ではキーを握る人物達です。
あ、そういえば他のキャラの出番無いなぁ(汗
次辺りで他の人達も出さねばいけませんね。

では、次回のACT-#07でお会いしましょう。







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